studio malaparte
「アートドキュメンタリー」というジャンル。その複雑さと多様性を象徴する最も先端的な表現活動のひとつとして、『Edge』を紹介します。
2001年より「Sky PerfecTV!」で放映されている『Edge』シリーズは、映画をはじめ、建築、
詩など様々なジャンルに携わるアーティストたちのポイエーシス(制作)の現場に立ち合い/立ち入り、その相互の関係性に基づいて映像作品に紡ぎあげていくドキュメンタリーです。
これをアートドキュメンタリーと包括する諸要素――映像制作者(主体)と対象(客体)の相互貫入、それが頻繁にもたらす制作途上の「ブレ」や変容、
ドキュメンタリーとフィクションとの間の自由な往来など――が、このシリーズを従来的なカテゴライズを容易に許さないものにしています。
本シリーズの制作者であるスタジオ・マラパルテ(主宰:宮岡秀行)は、単に映像作品の制作にとどまらず、上映を主体とした様々な活動を全国で展開し、
そこでもまたジャンルを越境した他者/異物を次々と巻き込んでいきます。
『Edge』とは、シリーズを形成する個々の映像作品がそうであるように、あらゆる領域の境界(Edge)を行き来しながら常に変化し続ける動態、
完成を見ることのない一つのWork-In-Progressとも言えるでしょう。
初出:「横浜美術館上映会『映画/アート』シリーズ3」公式パンフレット
松永 真太郎(まつなが・しんたろう)
横浜美術館 映像担当学芸員