studio malaparte
11998年5月に開催されたオープン・セミナー「鷺ポイエーシスⅠ 映画と建築の接線」につづき、 この度オープン・スタジオと称して「鷺ポイエーシスⅡ transfiction」を開催いたします。
スタジオ・マラパルテならではの作品上映と、様々な講師陣を招いたその第一回目が、セミナー形式の講義篇だとしたら、 今回は国籍やジャンルを異にするアーティストが、共同作業をなし得るボーダーをこの島に作り上げてゆく、ということが大きなテーマとなります。
transfictionという名で括られるそのテーマは、文字どおり「虚構を越えて」、映像の終わりなき変形と変身を実践する試みを意図します。 情報のデシタル化に伴って映像制作の在り方が大きな転換期を迎えた今、その状況や背景を正しく理解し、破綻を恐れることなく、 むしろ好んでそれを受け入れ、即興性を身につけて行く場、それが今回のポイエーシスだといえるでしょう。
創作の初期からヴィデオ技術を導入しつつ、アメリカ映画の真の伝統を受け継ぎ、クェンティン・タランティーノらから憧憬され続けるロブ・ニルソンが、 スタジオ・マラパルテと共同して“transfiction”というテーマのもと、ヴィデオ作品を制作する一方、 八戸に拠点をおき、海外10ケ国以上から招待をうけ、活動を行っている豊島重之&モレキュラー・シアターが、 「HO・koriの培養(Culture of Dust)」と題した作品を共同制作。
「佐木島コテージ(プラージュ+リング)」はもとより、佐木島全体を使った3日間のワーク・ショップの中から、参加者と共に「制作中の作品」を創り上げます。
日米最強のインディペンデント作家と共に、日頃あまり公開されることのない制作の現場を開き、そのテンションのなかで即興性を身につけ、 参加者自らが「いま、制作するとは何か?」という問いを存分に育むようスタジオ・マラパルテは企図しています。
この島では、出演者や参加者は、もはや作家でも音楽家でも批評家でも映画監督でもなく、もしくは経験者でも初心者でもなく、 キャメラの背後と前をトランスしながら一つの「虚構」をつくり上げます。
狭義な表現に収束することなく、他国や他領域に貢献し得る質を備え、新たな動きを共に生みだす「鷺ポイエーシス」に、どうぞ御期待ください。
Let's join us!
スタジオ・マラパルテ
date '98.11月21日(土)~23日(祝)*3泊3日
place 広島県三原市 佐木島/"さぎしまセミナーハウス"&"佐木島コテージ"
■ロブ・ニルソン Rob NILSSON サンフランシスコ
映画監督。1939年生。ハーバード大学卒業後、ナイジェリアへ教師として就任する傍ら、絵画、詩作、映画制作を始める。 現在はホームレスの人々と共に映画・演劇ワークショップを開き活動を続けている。 作品に『ノーザン・ライツ』('78)カンヌ映画祭新人賞受賞 、『ヒート&サンライト』('87)U.S.フィルム・フェスティバル・グランプリ受賞、最新作 "Chalk"('96)など。 他にCD-ROMの制作などを試み、映画制作のボーダー・レスな在り方を問うている。
■豊島重之&モレキュラー・シアター TOSHIMA Shigeyuki & Molecular theatre 八戸
モレキュラー・シアター主宰/臨床精神科医。1946年生。 東北大学医学部を卒業後、八戸を拠点にモレキュラー・シアターを結成、国内外で活動を続け、ジャンルを越えた高い評価を得ている。 最新作はヴィデオ映像を駆使したオペラ『サンナイ』(韓国・平澤市アート・フェスティバル招待作品)、98年9月フランスの詩人アラン・ジュフロワを招聘し、東京にて上映される。 尚モレキュラーに関しては、内野儀による論考「〈いま・ここ〉に降り立つ」(「批評空間」第1期第4号)に詳しい。
■諏訪敦彦 SUWA Nobuhiro 東京
映画監督。1960年生。東京造形大学卒。石井聡亙、山本政志などの助監督を務める一方、90年よりテレビ・ドキュメンタリーの演出を手がける。 97年『2/デュオ』で監督デビュー。ウィーン・ビエンナーレ'97国際批評家連盟賞、ロッテルダム映画祭NET PAC賞を受賞。 快復する家族の絆をテーマに即興演出された、三浦友和主演の新作『M/OTHER』を完成、99年度カンヌ国際映画祭批評家連盟賞を受賞。 最新作であるベアトリス・ダル、町田康主演『H story』は、2001年カンヌ映画祭監督週間に出品された。
■樋口泰人 HIGUCHI Yasuhito 東京
映画批評。1957年生。慶応義塾大学経済学部を経て、執筆活動を開始。 『カイエ・デュ・シネマ ジャポン』編集委員を経て、現在は雑誌や書籍、CD-ROMのエディターも務める。 映画批評に音楽論を導入した第一人者であり、ロブ・ニルソンとは公私を越えた友人である。 著書に『映画とロックンロールにおいてアメリカと合衆国はいかに闘ったか』(青土社)、編著に『ロスト・イン・アメリカ』(デジタルハリウッド)、 監修に『ヴィム・ヴェンダース』(e/mブックス)、CD-ROM「チャップリン モダン・タイムス」(パイオニアLDC)など。
■澤野雅樹 SAWANO Masaki 埼玉
明治学院大学助教授/社会思想史。1960年生。明治学院大学大学院後期博士課程。 映画を思想の対象とし、共同通信をはじめ様々なメディアを通じて、これまでにない柔軟な思考を展開している。 著書に『癩者の生 文明開化の条件としての』(青弓社)、『ロックする哲学』(青弓社)、『記憶と反復 歴史への問い』(青土社)、 『死と自由』(青土社)、『数の怪物、記号の魔』(現代思潮社)、『不毛論』(青土社)など。
■崎山政毅 SAKIYAMA Masaki 京都
神戸外国語大学助教授/ラテン・アメリカ史/第三世界思想研究。1961年生。京都大学大学院後期博士課程。 京都大学助手、同大学院助手を経て、現在に至る。国際的な人脈を駆使し、映画『SHOAH』の上映活動などにも携わった。 著書(共著)に『ファシズムの想像力』(人文書院)、『歴史とは何か』(河出書房新社)、『サバルタンと歴史』(青土社)など。
■加藤修+小路倫子 SYU+ RIN 広島
美術家/音楽家。1947+48年生。絵画・立体・額・土器・音具などを制作。95年、主にアフリカの打楽器と声とのプリミティブな演奏集団“SAYAN”を結成。 互いに良きパートナーとして広島を中心に全国で活動を展開中。作品に『沈黙の春』(装画・加藤修/新潮社)など。 またアレクサンドル・ソクーロフ著『チェーホフが蘇える』(書肆山田)は、加藤修への思い出から語りおこされている。