studio malaparte
今回の「鷺ポイエーシス」は、これまで行ってきたセミナー・スタイルのものと、ワークショップ・スタイルのものをミックスして行います。 これはただ受動的に、上映される映画を見てトークを聞くというのではなく、もう少し積極的に〈ポイエーシス・ものを創ること〉の愉しさを体験するためのものです。
コンセプトは「少女というキーワードに映し出される、映画と建築と〈しま〉の未来」です。 この未知なる視点から、いかなる力が私たちに働きかけてくるのか。複数のジャンルが干渉しあう鷺の空間から、映画と建築の〈不純さ〉を透視し、 新しい芸術活動の創出に向けて、取り組みたいと思います。
また、まとまった形では初めて日本に紹介されるジャン=ピエール・ゴラン監督の〈現在〉は、ゴダールとともにジガ・ヴェルトフ集団を率いた季節とは違った趣で、 私たちに、多くの示唆を与えてくれるでしょう。ゴランが今回佐木島で撮影する映画は、ゴダール作品『軽蔑』のリメイクになります。 しかし、たんに名作をリメイクするのではなく、そこから出発して、少しでも映画の内と外への意識が革められる協同作業を目指します。
ワークショップ参加者は、スタッフや俳優として〈現場〉を共有します。またセミナー参加者は、オープンな撮影を見学できます。 もちろんワークショップ参加者もすべてのレクチャーに参加、創造周辺の〈現場性〉を理解してゆきます。
2001年を第一期としてスタートした「鷺ポイエーシス」は、今回がその最終回となります。 一つはシリーズがマンネリ化におちいることを避けるためであり、またスタジオ・マラパルテの企てが、さらに次のサイクルを目指して歩を進めるためです。 このような商業的ではないセミナーでは、参加者の数が限定されてしまいますが、どんなに小さなものであっても、 「鷺ポイエーシス」は外に向かって開かれた、窓としての役割を果たすものでありたいと考え、今日まで歩んできました。 これまでご支援くださった多くの方々に、心からお礼を申し上げるとともに、最終回であり新たな出発となる「鷺ポイエーシスV」に、どうぞご期待下さい。
スタジオ・マラパルテ
date セミナー:'01.3月17日(土)~18日(日) ワークショップ:'01.3月16日(金)~20日(祝)
place 広島県三原市 佐木島
1)The project will consists of two parts;
a) seminars where Mr. Gorin will be having a discussion with various guests
b) workshop where we will be shooting a re-make of "Contempt" in a similar style a Godard's "Scenario du Film Passion."
2)In the seminars,the guests will discuss themes from "Contempt."
We hope that the discussion between Mr. Gorin and the guests will influencthe production.
ゴダールの『軽蔑』をリメイクします。
主な理由
1)〈女の子〉の物語(ブリジット・バルドー演じるカミーユ)であるため。
2)マラパルテ荘が、映画後半の舞台であるため。
リメイクというよりは、ヴィデオ・シナリオのような形式を目指します。
今回撮影された素材は、アメリカでのポスト・プロダクションをへて完成させます。プロフェッショナルな作業を直に経験し、
国籍を越えた協同作業の場として〈結果〉を残すことが、〈サギ・スタイル〉のワークショップです。
要スタッフ:監督 ジャン=ピエール・ゴラン/助監督 安藤尋/撮影監督 長島有里枝
映画をつくることを自分自身のために必要としている人であれば、経験は一切問いません。
申込み時にスタッフまたは俳優希望とお伝え下さい。
複数のジャンルにおよぶゲストが、ゴランとのクロス・トークを行い、また同時に、ゴランのアメリカ時代の全作品を上映します。
1)レクチャー1:「ゴランを導入する」ジャン=ピエール・ゴラン+浅田彰
2)レクチャー2:「少女都市のゆくえ」磯崎新+ジャン=ピエール・ゴラン
3)レクチャー3:「Girlquake!」内田春菊+ジャン=ピエール・ゴラン+長島有里枝
4)映画上映 *全作ジャン=ピエール・ゴラン監督/日本未公開/日本語字幕付き/ヴィデオでの上映
サン・ディエゴ三部作
『ポトとカベンゴ(Poto and Cabengo)』'78, 73min.
『ルーティーン・プレジャーズ(Routine Pleasures)』'86, 79min.
『マイ・クレイジー・ライフ(My Crasy Life)』'91, 95min.
ピーターへの手紙(Letter to Peter)』'92, 87min. *予定
*三菱電機株式会社の協賛により、最新型の高画質上映システム「クリア・スペース・ディスプレイ」での上映となります。
<ワークショップ・ゲスト>
■ジャン=ピエール・ゴラン Jean-Pierre Gorin
映画監督/批評家。42年生。フランス/アメリカ。
ソルボンヌ大学卒業後、「ル・モンド」紙の編集に携わる。68年にゴダールと共に〈ジガ・ヴェルトフ集団〉を結成、映画における新たな方向性を示す。
73年渡米、カリフォルニア大学サン・ディエゴ校(UCSD)にて映画史、映画批評の教鞭を執るかたわら、活発に映画制作を続けている。
また雑誌や新聞に映画批評も執筆。主な作品:『東風』(ジガ・ヴェルトフ集団)、『万事快調』(ゴダールと共同監督)、〈サン・ディエゴ三部作〉など。
■長島有里枝[ながしま ゆりえ] Yurie Nagashima
写真家。73年生。東京。
93年にTokyo Urbanart #2展パルコ賞を受賞、センセーショナルなデビューを飾る。
写真家荒木経惟に激賞され時代の寵児となるが、それを断ち切るようにアメリカへ留学。
99年に帰国し、本格的に活動を開始。主な作品:『長島有里枝写真集』(風雅書房)、『PASTIME PARDISE』(マドラ出版)など。
■安藤尋[あんどう ひろし] Hiroshi Ando
映画監督。65年生。東京。
早稲田大学卒業後、数々の助監督を経て、94年にデビュー作のピンク映画『アブ・ノーマルSEX・変態まみれ』で新人監督賞を受賞。
その後も映画監督としてTVやVシネマなどで幅広く活躍。着々と新作を発表し、今後最も期待される若手監督の一人として注目されている。
主な作品:『pierce』『dead BEAT』など。
■リュウタ・ナカジマ Ryuta Nakajima
通訳/美術。71年生。日本/アメリカ。
86年より日本を離れて教育をうけ、UCSDでは美術を専攻。
現在はミネソタ大学助教授として教鞭を執るかたわら、自らも画家としてグループ展や個展を行っている。
95年から97年にかけてゴラン氏の助手として働く。ゴラン氏の右腕として通訳を越えた信頼を得ている。今回は通訳兼助手として参加。
<セミナー・ゲスト>
■磯崎新[いそざき あらた] Arata Isozaki
建築家。31年生。大分。
63年に磯崎新アトリエを設立。現在に至るまで数々の賞を受賞し、国内外を代表する世界的な建築家として活躍中。
主な作品:つくばセンタービル、ロス・アンジェルス現代美術館、バルセロナ・スポーツホール、水戸芸術館、静岡県コンベンション・アーツセンターなど。
主な著書:『建築家捜し』(岩波書店)など。
■内田春菊[うちだ しゅんぎく] Syungicu Uchida
漫画家/作家。59年生。長崎。
84年に漫画家としてデビュー。現代の「性」を軽快なタッチで描き、若者を中心に絶大な人気を博す。
93年には自伝的小説「ファザー・ファッカー」が大ベストセラー、直木賞候補となる。
現在は小説家、女優、ヴォーカリストとしても活躍。主な作品:「南くんの恋人」(青林堂)、「私たちは繁殖している」(ぶんか社)など。
■浅田彰[あさだ あきら] Akira Asada
経済学/思想史。57年生。兵庫。
京都大学経済研究所助教授。経済からサブカルチャーまでを論じられる新世代の論客として活躍。
磯崎新とともに建築の世界的な会議「ANY」に携わる。また、「InterCommunication」の編集委員もつとめる。
主な著書:『構造と力』(勁草書房)、『映画の世紀末』(新潮社)、『20世紀文化の臨界』(青土社)など。