studio malaparte
■Edge 2~今を、いきる。 第三弾
2007年11月24日放映「Requiem for what’s-his-name」(60分)
世界的に知られる作曲家の細川俊夫は、2005年7月6日、被爆60周年となる故郷広島で、 彼のマスターピース「ヒロシマ・声なき声」を広島交響楽団によって日本初演、自ら指揮棒(タクト)を振った。 その記念すべきコンサート「未来への追憶」は、「鎮魂」「ヒロシマ」「恒久平和」をテーマとしたものでもあった。 一方、広島に生まれ育った詩人原民喜は、1945年8月6日の自らの被爆体験を綴り、戦後文学史上に残る小説『夏の花』を生み出した。 この番組は、細川の音楽と原民喜の言葉を織りかさねながら、軍都でもあったかつての広島や、 現在の被爆建物や被爆樹木などの光景を映し出していく、もう一つの「鎮魂歌」である。
構成・演出:宮岡秀行
撮影:浦田秀穂、西原多朱
出演:出演:細川俊夫(作曲・指揮)、広島交響楽団(演奏)、原民喜、野村喜和夫(朗読)
細川俊夫(ほそかわ・としお)
作曲家
1955年広島生。1976年から10年間ドイツ留学。
ベルリン芸術大学でユン・イサンに、フライブルク音楽大学でクラウス・フーバーに作曲を師事。
1980年ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に初めて参加、作品を発表する。
以降、ヨーロッパと日本を中心に作曲活動を展開し、ヨーロッパの重要な現代音楽祭のほとんどから招待作曲家あるいは講師として招かれ、
作品が演奏されている。1998年ミュンヘン・ビエンナーレの委嘱により、初めてのオペラ『リアの物語』(鈴木忠志の台本・演出)を初演、
「東洋と西洋の出会いから新しい音楽世界を切り開いた作品」と絶賛された。
2005年8月、ザルツブルク音楽祭において、同音楽祭委嘱のオーケストラ作品がヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって世界初演される。
1998年より東京交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンス。2001年より武生国際音楽祭音楽監督。現在、東京音楽大学客員教授。
原民喜(はら・たみき)
小説家・詩人
1905年広島生。十代の頃、兄・守夫と家庭内同人誌「ポギー」を発刊して詩作を始める。1924年慶應義塾大学に進学。
1933年評論家佐々木基一の姉、永井貞恵と結婚。1936年から1941年にかけて短編小説を多数発表するが、1939年の妻の発病により次第に作品発表数は減少した。
1944年妻が死去。1945年1月郷里の広島に疎開、8月6日に広島市に原爆投下。この体験は惨状をメモした手帳を基に描いた『夏の花』(1947年)などに結晶していく。
1946年に上京。嘱託英語講師をしながら『三田文学』の編集に携わり、遠藤周作をはじめ多くの後進を育てた。
1948年『三田文学』の編集室のあった能楽書林に転居し、雑誌編集と執筆活動に専念。
1951年3月13日、国鉄中央線の吉祥寺駅~西荻窪駅間の線路に身を横たえ、自殺を遂げた。