studio malaparte
リュックならこの美しいイヴェントをとっても楽しみ、そして名誉に思ったでしょう。私もそう! こんなにも大切なイヴェントが、彼の住む場所からずっと遠く離れた場所で行われるなんて、彼は想像もしなかったでしょう。私も想像しなかった! 私たちにとって3度目の来日ができて、あなた方と共にいられたのなら、素晴らしかったでしょう。 私たち二人が愛したあなた方の国。あたたかい歓迎と、彼の作品に対する興味と、たくさんの友に会える素晴らしい機会と喜びに、いつも私たちは心から感謝し ています。リュックはそんなあなた方の国と、あなた方のことを、今彼がどこにいるにしても、記憶の奥に大切に抱いていることでしょう。私もそうだから! でも、私は自分がいるこの場所から、日々想いの中で、みなさんと共にいます。
2006年3月15日
ブリュンヒルト=マイヤー・フェラーリ
惜しくも、2005年8月に急逝してしまった、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari 1929-2005)は、
どんな過激な表現も平気で自分の音楽に取り込んでしまう大胆さと、尽きせぬ好奇心を持ち得た、きわめて特異な音楽家だ。
ジャンルやシニシズムに充ちた現代のミュージック・シーンにあって、彼は「遊戯」という音楽像を追い求めた。
そのようにして、ユーモアを決して失うことのなかったフェラーリを、ジョン・ゾーン、ジム・オルーク、デイヴィッド・グラブス、大友良英、
DJオリーブ、エリックMなど、今日の実験的ポピュラー音楽をささえる音楽家たちは、そろってリスペクトしている。
2002、03年、作曲家鈴木治行らの招きで初来日を果たしたフェラーリとスタジオ・マラパルテの出会いをきっかけに、
彼の音楽とパリで生活する今を追った「作曲された映画/ある抽象的リアリストの肖像」は誕生した。
2005年ロッテルダム国際映画祭に『母モニカ―for a film unfinished』が招待上映され、「非常に独創的!」と高く評価された映画作家宮岡秀行は、
映画祭の帰途パリへ赴き、マルセイユ出身の売れっ子DJエリックMとフェラーリが行ったリハーサル、長年連れ添ってきた夫婦の時間を通して、
フェラーリのヴァイタルな姿を浮かび上がらせる。
それは音楽家という、ある個人を超えた人生の貴重なひとときをとらえた映像であり、時間でもあった。
本作は、まずCS放送『Edge2~今を、いきる。』(SKY PerfecTV! 216ch)の番組として制作された。
その放映を見た劇場支配人の「是非公開を」という声で、本劇場版の作製が決定した。
今回上映される劇場版の仕上がりに「大変感動した」というフェラーリ夫妻とは、公開を機に再会を約束した。
しかし、8月にイタリアでヴァカンス中だったフェラーリが肺炎で急死。
この映像は、彼の「LAST DATE」の記録でもある。
また、マラパルテは、本作品の「DVD化はしない」ことを決意。
劇場のTPOを考慮し、黒川博光(てんこもり)とともに自然音のmixを一からやり直している。
2005年/46min./DVCAM/color+b&w/劇場版
出演:リュック・フェラーリ、ブリュンヒルト=マイヤー・フェラーリ、エリックMほか
制作/構成/編集:宮岡秀行
撮影:アンダース・エドストローム 撮影(音楽シーン):西原多朱
音響:黒川博光(てんこもり)、宮岡秀行
音楽:リュック・フェラーリ "Les ProtoRythmiques" リュック・フェラーリ(CD)、エリックM(エレクトロニクス)
プロデューサー:宮岡秀行、設楽実
Edge監修/アドヴァイザー:城戸朱理
制作:スタジオ・マラパルテ
提供:Art Square
日本語字幕翻訳:村上伸子
■ブリュンヒルト=マイヤー・フェラーリ Brunhilt Meyer Ferrari
フェラーリ生涯の伴侶。ドイツ生まれ。1959年にフェラーリと出会い、そのままフランスに移住。 その後、国内外のコンサートに同行して主催者とのマネージメントや通訳を行ったり、CDのライナーノーツの執筆や翻訳、 また1982年にはラ・ミューズ・アン・セルキュイの設立にも携わるなど、音楽家フェラーリのプロデューサー的存在として、公私ともに良きパートナーとなる。 フェラーリの死後は彼が遺した膨大なテープ作品や資料の整理を進めている。
■エリック M erikM
ターンテーブル奏者、フランス。フランスを代表する最もアクチュアルなミュージシャンの一人として、ヨーロッパ、アメリカなどでライブ活動を行う。 またフェラーリの他、クリスチャン・マークレィ、デレク・ベイリーなどともコラボレーションし、音楽ジャンルを横断しながら活動を展開している。 作品に"FRAME"(1999)、"Zygosis"(2001)など。
■ジャクリーヌ・コー Jacqueline Caux
音楽学者、フランス。フェラーリ夫妻の親友であり、フェラーリの音楽について最も深い理解者の一人。 フェラーリへのインタビューを中心に、彼の音楽についてまとめた書籍が、 3月に日本でも発行される(『リュック・フェラーリと共に、ほとんど何もない』椎名亮輔訳,現代思潮新社)。
■アンダース・エドストローム Anders Edstrom
写真家・映画作家。1966年スウェーデン生まれ。デザイナーのマルタン・マルジェラと様々なコラボレーションを行ったり、 アート雑誌"Purple"の創刊から関わるなど、ワールド・ワイドに活動を続けている。 また、カーティス・ウィンターとともにデレク・ベイリーのドキュメンタリー"One Plus One 2"(2003)を制作。 写真集に"spidernets places a crew"+"waiting some birds a bus a woman"(2004/steidlMACK)など。
■西原多朱(にしはら たづ)
撮影、スタジオ・マラパルテ。1971年京都生まれ。 様々な上映活動や自主映画制作に携わった後、1997年に宮岡秀行とともにスタジオ・マラパルテを設立。 作品(撮影)に『百年の絶唱』(1997/監督:井土紀州)、『Winter Oranges』(2000/監督:ロブ・ニルソン、共同監督:諏訪敦彦)、 『今、海はあなたの左手にある』(Edge Cinematographeより/2002/制作:安藤尋)など。
■黒川博光(くろかわ ひろみつ)
サウンドエンジニア・てんこもり取締役。1968年東京生まれ。数多くのPVやTV番組のサウンドを手掛ける。 またスタジオ・マラパルテが制作した全番組のMAを担当。 本作ではTV版のみならず劇場版でも、チーフ・ミキサーとして自然音・環境音の調音に手腕をふるう。 作品(MA)に『布袋寅泰 Live』、『スチャダラパー PV』など。